25日に亡くなった米共和党のジョン・マケイン上院議員の死を悼む声が、かつての敵国ベトナムでも広がっている。ベトナム戦争に従軍した同氏は、捕虜として5年余り拘束されたが、その後は政治家として両国の国交正常化に尽くした。
マケイン氏はベトナム戦争中の1967年、ハノイの空爆に参加した際に撃墜され、湖に落ちたところを北ベトナム兵士や市民に救助された。捕虜として激しい拷問を受けたともされるが、その後は、米軍に「ハノイ・ヒルトン」と呼ばれたホアロー収容所に留め置かれた。
収容所跡地は、現在は博物館になっており、マケイン氏の救助時の写真などが展示されている。
当時収容所の所長だったチャン・チョン・ズエ氏(85)は28日、朝日新聞の取材に対して「かつて敵対した二つの国を近づけた、ベトナムの大いなる友人を失い、とても悲しい」と述べた。
収容所にいたマケイン氏は穏やかな人柄で、敵ながらよく話をしたと振り返り、「将来は優れた政治家か外交官になると思っていたが、その通りになった。両国のために尽くした彼のような人がこれからも必要だ」とその死を惜しんだ。
ファム・ビン・ミン外相は27日、在ハノイ米国大使館を弔問に訪れ、「戦争の傷を癒やし、両国関係の正常化と推進のために先頭に立って尽くした人だった」と述べた。フック首相らが弔辞を送った。(ハノイ=鈴木暁子)