エスカレーターを利用する際に片側を空けるのは、転倒事故などにつながる恐れがあるため、鉄道会社が注意を呼びかけている。ただ、慣習を変えるのは、たやすくない。啓発活動が15年目に入った名古屋市営地下鉄では、ようやく両側に立つ利用者が見られるようになってきたものの、場合によっては片側空けと使い分けているのが実情だ。
「歩いたり走ったりせず、手すりにつかまり、立ち止まってご利用ください」。10日朝、市営地下鉄久屋大通駅のホームで駅員らが呼びかけた。エスカレーターの左側で1列に順番待ちしていた利用者が、右側にも並び始め、次第に両側が埋まった。
名古屋市昭和区の会社員の女性(22)は「周りが止まっていると止まれるけれど自分だけだと立ち止まれない」。名古屋市東区の会社員の男性(48)は「乗り換えの時間があるので、通勤では右側を歩き、休日は立ち止まる」と話す。
昇降機に関する業界団体「日本エレベーター協会」によると、そもそもエスカレーターは歩行を想定して設計されていない。歩くと人にぶつかる危険があるという。
市交通局によると、ここ数年は接触による事故やけがの報告は入っていないが、走って足を滑らせるなどの転倒事故が昨年度は22件起きている。
市が啓発活動を始めたのは2004年。高齢者から「右側を歩かれると怖い」という声が届いたのがきっかけだった。08年からはエスカレーターマナー啓発運動として、4月を除く毎月10日に重点的に呼びかけをしている。
同じく08年から職員の提案で、「歩かないで」といった注意喚起の掲示を各駅で始めた。金山駅には「歩く振動により緊急停止します」という文言も。歩くとただちに停止するわけではないが、浸透させるため、試行錯誤の末にたどり着いた表現だという。
それでも片側空けを見かけるこ…