投げごまやベーゴマの楽しさを伝え続けて25年。名古屋市の「こまのおっちゃん」は、子どもを訪ねて北海道から沖縄まで飛び回る。世界のこまを約5万点集め、博物館も作った。
名古屋市港区の「日本独楽(こま)博物館」は、約300平方メートルの建物に70カ国のこまが並ぶ。館長の藤田由仁さん(74)は、こまの販売をしながら、子どもたちに遊び方も教えている。
「イヤリング、きれいでしょう?」。ひもにぶら下がって回転を続けるこまをイヤリングに見立て、藤田さんが女性の声音で言う。見ていた子どもたちは「おっちゃん、面白い」と喜ぶ。失敗するところも見せる。「難しさを強調すると、子どもが引いちゃうから」
藤田さんは兵庫県出身。会社員だった1970年代初め、熊本市で木製「ちょんかけごま」を見て魅了された。こまの作り手が年々減っていることを知り、収集を決意した。電話帳を頼りにこまを作る職人を探し、週末になると北海道から沖縄まで車で出かけた。宿代や食費を浮かせるため、鍋や釜も積み込んだ。
「技を100個覚えても食べていかれへん。けど、出来ないことに挑戦するこまは楽しいで」
81年、兵庫県芦屋市に博物館を作った。名古屋に転勤すると、博物館も「移転」した。50歳目前に会社を辞めて、子どもにこま回しの魅力を伝える「伝道師」になった。2002年には、こまの普及をめざす「日本こままわし協会」を設立。国内の幼稚園や学校のほか、ドミニカ共和国やコロンビアなど世界中でこまの楽しさを伝えてきた。
名古屋市瑞穂区の小学6年古塚…