日大の悪質タックル問題に揺れたアメリカンフットボール。9月1日に開幕する関東学生リーグ1部の上位「TOP8」は混戦が予想される。優勝候補だった日大の参加が認められず、早大や法大を軸に優勝争いが展開されそうだが、面白いのが日体大だ。
日体大での注目は1年時から試合に出ている攻撃の司令塔QB小林優之(まさゆき、4年、東京・佼成学園)。身長163センチの小柄なQBだが、昨季甲子園ボウルに出場した関学大と5月に対戦。次々とパスを通し、圧巻のパフォーマンスを見せた。
この日は試合開始前から強い雨が降り続けた。フィールドは水たまりだらけ。一般論では雨天時にパスは投げにくいとされるが、「雨にマイナスなイメージはない」と小林。目線で守備選手を惑わし、長短交えてリズム良くパスを決めていく。43回投げて、32回成功。最長は45ヤードで、1試合で計391ヤードも獲得した。「プレッシャーもあまりなかったので、決めるだけでした」と強豪相手でもサラリ。第3クオーターには自ら走ってタッチダウンも挙げ、関学戦での24年ぶり勝利に大きく貢献した。関学大の鳥内秀晃監督も「ほんま、よう通されたわ。やっぱりすごいわ」と舌を巻いた。
日体大は2年連続で関東TOP8の最下位。小林は高校時代、全国制覇まであと2勝に迫っただけに、「今年こそ、日本一を本気で目指している」。だからこそ、春の目標は「関学に勝つ」ことだった。それを達成し、「正直、めっちゃうれしいです」と笑った。
日大の悪質タックル問題で、思わぬ形でアメフトが世間から注目された。小林は「マイナスのイメージを持っている人も多いかもしれない。でも、こうやって弱いと思われたチームが関学みたいな強いチームに勝つことができるのがアメフト。僕たちが勝ち続けて、楽しさを伝えていきたい」と話している。(大西史恭)