宝塚歌劇月組のミュージカル「エリザベート」で皇太子ルドルフ役をひたむきに熱演中の暁千星(あかつきちせい)が、7年目までの新人スターでつくる新人公演で、黄泉(よみ)の帝王トート役に挑む。「私にとって最後の新人公演。青春が終わるみたいでさみしいけれど、主演できるのがすごくうれしい」と胸を高ぶらせる。
作品との出合いは、2009年の月組公演にさかのぼる。「瀬奈じゅんさんのポスターがかっこよくて。チラシを切って、スケジュール帳の表紙に貼っていました」
演じるトートについて「『死』という役どころだけど、嫉妬心とか愛の激しさとか、人間味がある」と分析する。「何度も再演されて、トップさんによって全然違う。その人の魅力が出る役なんだろうなと思う」。
「自分からしか役はつくれないので、『自分が同じ状況だったら?』ということを一番に考えます。愛や嫉妬の気持ちは分かるかな」。考えをめぐらせて、一歩ずつ自分なりのトートに近づいていく。
今回が新人公演で4度目の主演。近年は老け役などもこなし、演技の幅を広げてきた。「負けず嫌いなので、『できなくない!』と思ってやっています」。あどけない瞳の中に、静かな炎がともった。(杢田光)