北海道地震で大きな被害を受けた厚真、安平、むかわの3町でボランティアの受け入れが本格的に始まった。各地からのボランティアに支えられる一方、被災した小規模な自治体が受け入れ態勢を整えるまでの苦労もあった。
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北海道で震度7、道内の被害状況は
「ピピピピピ」
北海道厚真町の災害ボランティアセンター。13日朝も、ボランティア募集の専用ダイヤルを受ける携帯電話がひっきりなしに鳴っていた。電話を切っても、また着信音。職員1人は、対応にかかり切りだ。
同町は今回、直前までどれだけのボランティアが必要か判断ができない、として募集対象を道内の人に限定。それでも、当初、メールでもボランティア応募を受け付けていたところ、申し込みが殺到し、12日昼にはやむなくメールの募集を中止した。副センター長の山野下誠さん(47)は「ありがたい限り。気持ちだけでも、我々の大きな支えになっている」と話す。
同町が11~12日に受けた申し込みは電話とメールあわせて800件超。事前に申請がないまま、現地入りする人もおり、12日は予定の倍以上となる160人が集まった。人口4600人余りの町には、現時点では十分すぎる人数だったといい、仕事が早く終わり、午前中で帰る人もいた。
受け入れに当たる職員も被災で心身共に過酷な状況にある。知人や同僚の訃報(ふほう)が次々と舞い込むなかで、被害状況を把握するのが精いっぱい。職員からは当初、「ボランティアセンター開設なんて、無理かもね」との声が漏れた。同町の災害ボランティアセンター長を務める松田敏彦・町社会福祉協議会事務局長(62)は「この町では全員が被災者。落ち込んだ気持ちを切り替え、なんとかここまできました」。
そんな地元を支えたのは応援のスタッフだった。地震直後で電話も通じないなか、苫小牧市や名寄市などの社会福祉協議会から、被災地支援の経験を持つ職員らが駆けつけた。応援部隊に押されるように、ボランティアの受け入れ準備が始まった。
センターを設置する建物探し、電話やネットの整備、駐車場にする空き地の芝刈り……。当初は6人ほどの「助っ人」が頼りだった。10日以降は周辺からの応援スタッフもさらに増え、予定より早い受け入れにこぎつけた。
山野下さんは「いざという時、頼りになるのは人のつながりだと痛感した。私たちだけでは無理だった」と振り返る。(高野遼、狩野浩平)
手探りの対応続く現場
小さな町でいかに早く、必要な数のボランティアを受け入れるか。現場では手探りの対応が続く。
安平町では、参加者に事前登録を求め、すでに1千人以上が登録済み。1日50~200人が倒壊した家屋内の家具の片付けや避難者の支援などをしている。
安平町で12日夕、ボランティアをしていた女子学生(22)は「少しでも力になれば、と友人と2人で来た。東日本大震災で宮城県名取市の実家も被災した。家の中が片付けば気持ちが落ち着くと思う」と話す。
むかわ町は事前申し込みは不要として、幅広く受け入れており、すでに100人単位のボランティアが炊き出しなどを実施した。
13日も100人以上が申し込み、「町内の被災地域全域でがれき撤去などの力仕事をお願いしたい」(町担当者)という。
北海道社会福祉協議会は「スタッフの派遣など可能な限り応援はするが、地元に詳しい職員がボランティア受け入れの主役を担わなければいけないのも事実。慌てて多くのボランティアを受け入れても、余震の危険やニーズの把握不足で混乱を招く。対応に正解はないのかもしれません」と話す。(渡辺朔、宮川純一、三浦英之)