イラン国営テレビなどによると22日午前、同国南西部のアフワズで、数百人規模の軍事パレードが4人組の武装集団に襲撃された。子どもを含む少なくとも25人が死亡、60人以上が負傷した。イスラム教シーア派が国教のイランでは少数派であるスンニ派の反体制組織が犯行声明を出した、とイランメディアは報じた。
22日はイラン・イラク戦争(1980~88年)の開戦日で、アフワズを含めてイラン各地で軍事パレードが開かれていた。イラン国営テレビなどによると、銃を持った4人の襲撃犯がパレード会場に隣接する公園から現れ、軍関係者らに発砲。うち3人が射殺され、負傷した残る1人も病院で死亡したという。
イランのザリフ外相はツイッターで「外国勢力に雇われ、訓練などされたテロリストが襲撃した。イラン国民の生命を守るために、迅速かつ断固とした対応を講じる」とした。一方、過激派組織「イスラム国」(IS)も系列のアマク通信を通じて犯行声明を出した。
襲撃現場のアフワズは、テヘランの南西約500キロにあるフゼスタン州の州都で、同国では少数派のアラブ系住民が多く住む。同州には分離独立を目指すスンニ派のアラブ系反体制組織が複数あるが、犯行声明を出したとされるのは最も急進的な組織とみられる。
若者の失業率が高い同州では、経済危機による物価高に加えて水不足や電力不足が深刻で、今年6~7月には反政府デモが頻発するなど、住民の政府への不満が高まっている。
政府系タスニム通信は、襲撃犯がパレードに出席していた州政府幹部らを標的にしていたとの見方を報じた。襲撃があった同じ頃、首都テヘランではロハニ大統領が、イランの防衛力を誇示する演説をしていた。襲撃犯は国威を示す軍事パレードを襲撃することで、政府の威信を損なう狙いもあったとみられる。
イランでは、昨年6月にテヘランの国会や、初代最高指導者の故ホメイニ師をまつる廟(びょう)が襲撃され、少なくとも18人が死亡するテロ事件が発生。ISが犯行声明を出していた。(テヘラン=杉崎慎弥)