米国が核合意を離脱し、8月に制裁を再開したことを受け、イランで乳幼児の紙おむつが店頭から姿を消しつつある。外国企業がイランとの取引に消極的になり、原材料不足で生産が止まったとみられる。最高指導者ハメネイ師は「おむつの不足は政府批判をさせようとする(米国などの)陰謀だ」と呼びかけるが、生活必需品の欠乏に、国民の不満は高まっている。
「9月に入って紙おむつは品切れだ。輸入品も高くて仕入れられない」。テヘランで30年以上スーパーを営むアリさん(56)は空っぽになった紙おむつの陳列棚を見ながらため息をついた。入荷の見通しはないという。別の大型スーパーでも在庫はまばら。担当の女性店員は「輸入を継続できるかわからない。今のうちに買いだめすべきです」。
地元メディアなどによると、イランが生産する紙おむつは、原材料の約8割を輸入に依存。第三国も対象となる米国の「二次的制裁」で外国企業がイランとの取引を手控えているとみられ、多くの工場で生産が停止。メーカーの担当者は「原材料の不足で生産できない」と説明する。さらに、自国通貨リアルの下落を受け、輸入品のおむつも値段が上昇。価格は国産、輸入品とも9月初めから5割以上、上昇している。
専業主婦のホメイラ・サデギさん(33)は「子どものおむつは生活必需品。価格が下がったり、入荷されるまで待ったりはできない。スーパーを数軒回っても、手に入れられなくて困っている」と嘆く。ネット上では「ミサイルは持てるのに、紙おむつがないのはどういうことか」といった皮肉も飛び交っている。(テヘラン=杉崎慎弥)