2日朝、佐世保港の鯨瀬ターミナルビル(長崎県佐世保市新港町)にある五島産業汽船の窓口は無人で、閉まったままだった。同社の便を利用するはずだった乗客らは運休を知らせる貼り紙を見て、一様に戸惑った表情だった。
この日午前7時半に有川港(同県新上五島町)に向けて出発する高速船に乗船する予定だった同県佐々町の自営業の50代男性は急きょ、九州商船のフェリーに代えた。到着時刻は午前10時35分で、高速船より1時間半近く遅い。「予定がずれて困る。このまま五島産業汽船の便がなくなると、競争がなくなって船賃が上がりかねない」と話した。
福岡市に本社を置く金物を扱う商社員の男性も九州商船のフェリーに便を代えた。「島に滞在できる時間が短くなって、困ります」とこぼした。
午前9時50分発の有川港行きフェリーに乗る予定だった会社員の男性は窓口でぼうぜんとした表情。「先方との約束があるのに、どうしたらいいのか……」。フェリーは予約していたが、五島産業汽船から運休の連絡はなかったという。
午前10時発の福江港(同県五島市)行きの高速船に乗る予定だった五島市の看護師の女性は窓口で運休を知り、「えっ」と声を上げた。予約していたのに運休の知らせがなかったことを「不誠実。信じられない」と憤った。福江への便がある長崎市に移動するしかなく、「本当に困る」と話した。
長崎港でも利用客が代替便を求める姿が見られた。午前8時発の鯛ノ浦港(新上五島町)行きの高速船に乗る予定だった女性会社員(36)は「窓口に貼られた紙を見て、運休だと初めて知った。しかし、問い合わせ先の記載はないし、ホームページにも案内が出ていない」と憤っていた。(福岡泰雄、堀田浩一)