タクシー最大手の第一交通産業(北九州市)。全国で買収を繰り返し、現在は約8400台を保有しています。運賃など地域ごとに細かい規制があるなかで、全国にネットワークを広げる狙いとは。田中亮一郎社長(59)に聞きました。
――これまで約200社を買収してきました。
「車両の一部を買うなど分割譲渡を含めると二百数十社。買収後に再編もし、タクシー事業のグループ会社は現在125社になる」
――なぜそんなに買収してきたのですか。
「自ら買いにいったことはない。多くが経営難や後継者難を理由に相談に来る。第一交通の傘下に入るとブランド力もあがり、利用客が増える。控室を改装するなど運転手の働きやすい環境作りやコスト削減も進めることで、経営状況がよくなった実績をみているのだと思う。実際、買収後に倒産した会社はない」
――営業エリアが細分化したタクシーが全国網を張るメリットはありますか。
「メリットを一番感じたのは東日本大震災のとき。報道関係者や保険会社員、医師らを東京から被災地まで運んだ。被災地では地元のタクシー会社に引き継いで地方の移動をまかせた。熊本地震や西日本豪雨でも同じ。早期の支援、復旧への下支えになる」
「グループでは34都道府県をカバーしている。それ以外は地域のタクシー会社と提携して、47都道府県を網羅するようにした」
――地域の乗り合いタクシーにも積極的ですね。
「電車やバスの路線が廃止になったあとに自治体や地域住民が協議して導入するケースが多い。相談を受ければ必ず運行を引き受け、全国の45自治体でうちのグループが担っている。高齢者に外出する意欲が出るなど地域活性化につながった事例は多い。公共交通機関の最後のとりでだと自負している」
――ただ、乗り合いタクシーは補助金なしでは成り立たない状況です。
「一人一回100~500円程度。これだけでは赤字で、自治体などから補助金を受けているのは確かだ。でも、これまで鉄道やバスにどれだけ多額の補助金が投入されてきたのか。乗り合いタクシーなら負担が月10万円程度ですむ自治体もある。公共性を維持するためには必要なことだ」
「タクシーが地域になくなれば、運賃の高額設定も乗車拒否もできるようなライドシェアが入ってくる。利用者の負担ばかりが増えてしまう。それを阻止する存在でありたい」(聞き手・田幸香純)
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〈たなか・りょういちろう〉 1959年生まれ。東京都出身。青山学院大卒。82年に全国朝日放送(現テレビ朝日)入社。85年に第一交通産業に入り、2001年6月から社長。新しもの好きで、AIスピーカーやウーバーイーツなど、事業のヒントになれば、と積極的に使ってみるのがポリシー。