婦人服「アンタイトル」や紳士服「タケオキクチ」のブランドで知られるアパレル大手のワールド(神戸市)が9月28日、約13年ぶりに東京証券取引所1部に再上場した。利益を出せるようにはなったが、取り巻く環境は厳しく、課題は多い。
「厳しい評価として厳粛に受け止めている」。ワールドの上山健二社長は28日、再上場後の記者会見で硬い表情で述べた。初日の終値は、売り出し価格の2900円を220円(7・6%)下回る2680円。日経平均株価が一時、26年10カ月ぶりの高値水準となり、その終値は東証がワールドの上場を承認した8月22日より1757円49銭(7・86%)も上がった。上場には絶好のタイミングだったが、同社に対する「市場の目」は厳しかった。
ワールドは2005年、寺井秀蔵社長(現会長)が「短期的な業績に左右されない開発戦略を進めたい」などとして経営陣による自社株式の買い取り(MBO)を実施し、非上場となった。だが、郊外型ショッピングセンター(SC)などへの大量出店を進めたものの、リーマン・ショック後の消費不況やファストファッションの台頭で苦戦。スーパー「長崎屋」の再生などを手がけた上山氏を13年に招くことになった。
創業家以外で初の社長に就いた同氏は、不採算の13ブランドを廃止し、国内店の2割弱を閉めるリストラを進めた。一方で、新たな収益源を求め、衣料品の定額レンタルを展開するオムニスに出資し、「ラグタグ」の店名でブランド古着専門店を営むティンパンアレイを買収。3期連続で営業利益を伸ばすが、売上高の減少は続く。
ワールドは再上場によって、調達した400億円超のうち、200億円を使ってさらなる企業買収を進めるという。OEM(相手先ブランドによる生産)を強化し、販売代行などで中小アパレルなどを支援する事業を拡大する。洋服の企画、生産から販売までを一貫して管理するシステムの構築に調達資金を使い、システム自体を他社にも広げるという。上山氏は「強烈に株価を意識した経営をして、投資家の期待になんとしても応えていきたい」と意気込む。アパレル業界の「黒衣役」にまわる考えだが、成長戦略が描き切れているわけではない。
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