自宅の空き部屋などを有料で人に貸す「民泊」のルールができて3カ月。旅行客らが多い福岡県や沖縄県では民泊の需要が高まっているが、トラブルを防ぐための規制で低調な地域もある。地域社会との共存が、定着へのかぎを握りそうだ。
高原に畑が広がる福岡県筑前町の一軒家。ここに暮らす主婦の岡部由美子さん(64)は今年6月、民泊を始めた。
築65年で、もともとは7人家族で住んでいた家。宿泊客用の16畳の畳部屋は縁側から庭を見ることができ、キッチンやダイニングとつながる。敷地内には苗床もある。
岡部さんは、地域で宿泊つきの農業体験を提供する「朝倉グリーンツーリズム協議会」の会員だ。子育てが一段落して「部屋も空いており、うまく活用できれば」と考えた。
この秋、協議会が受け入れる県内の小学生が宿泊する予定だ。「一緒に地元の料理をつくったり、畑で収穫をしたりしたい。民泊をきっかけに町の良さを知ってもらって、地域の活性化につながれば」
住宅の空き部屋を有料で貸し出す「民泊」のルールを定めた住宅宿泊事業法(民泊新法)は、6月15日に施行された。民泊の事業者は自治体への届け出が必要で、一定の条件を満たせば営業できる。
観光庁によると、8月17日現在、全国で7594件の届け出がある。都道府県では福岡県が409件とトップで、沖縄県の350件が続く。市・特別区では札幌市962件、東京都新宿区579件となっている。
福岡県生活衛生課の担当者は、届け出が増えていることについて「外国人観光客などの宿泊へのニーズに応えようという動きがある」とみている。
沖縄県では、届け出があった民泊の約半分が、リゾート地が密集する中部地域に立地しているという。
沖縄県恩納村の上江田健氏(けんじ)さん(64)は、海沿いの自宅横にあるガレージを改装し、民泊新法に基づいて届け出をした。
観光シーズンの7~9月は予約でほぼ埋まっている。マリンレジャーなどを目的に、韓国など海外からの観光客が中心だという。違法な民泊を気にしている人もいるといい、「宿泊客からの信用度が上がった」と話す。
届け出低調な地域も
民泊新法ができた一方で、近隣住民とのトラブル回避のために規制があり、届け出が伸び悩む地域も少なくない。民泊に詳しい立教大学観光学部の東徹教授は、「法の狙いからみて低調」と指摘する。
要因の一つは、営業日数の上限が年間180日と定められていることだという。兵庫県では、神戸市などを除いた届け出が8月17日時点で7件。担当者は「観光客が多く訪れる都市部以外では、収益を目的とした事業としては成り立ちにくい」とみる。
さらに厳しいルールを定める自…