7月の西日本豪雨から3カ月。校舎やグラウンドが浸水した岡山、広島、愛媛の3県の学校では、依然多くの児童・生徒が不便な学校生活を強いられている。
7月の西日本豪雨で5千棟以上が浸水した岡山県倉敷市真備(まび)町地区。地区外で間借りしていた市立川辺小学校と箭田(やた)小学校の仮設プレハブ校舎が地区内の別の小学校敷地にそれぞれ完成し、9日から授業が始まった。
真備町地区の小中4校は校舎が浸水し、2学期が始まった9月から、別地区の学校の空き教室を間借りしていた。2中学校は10月1日にプレハブ校舎で授業を再開した。
川辺小(児童数277人)は約4キロ離れた薗(その)小の運動場に、箭田小(同268人)は約5キロ先の二万小の運動場に、2階建ての仮設校舎が完成した。
9日午前8時ごろから、川辺小の児童の通学バスが薗小に続々と到着。げた箱の前で先生たちが笑顔で出迎えた。朝礼の後、仮設校舎での1時間目に臨んだ。
自宅が被災した時弘亜希さん(37)の長男で3年の陸君(9)はこの日、倉敷市の隣の総社市のみなし仮設住宅から約1時間かけて登校した。亜希さんに車で約10分のバス停まで送ってもらい、そこから通学バスに乗った。
川辺小の間借り先の連島東小まで車とバスで約2時間かけて通っていた。豪雨の前、自宅から川辺小までは徒歩で10分ほど。起床時間が大幅に早まった陸君は「学校は楽しいけど、ちょっとしんどい。早起きは早く終わってほしい」とこぼしていた。
薗小のプレハブ校舎への登校で、通学時間は半分になった陸君。9日朝、「連島東小もよかったけど、真備町に戻れるのはやっぱりうれしい。まだ通学時間が長くてしんどいけど、薗小の子たちと一緒に遊ぶのが楽しみ」と話した。
倉敷市教委によると、真備町地区で校舎が浸水した小中4校の児童・生徒約1200人のうち、約900人がバス通学している。プレハブ校舎完成後も、1時間以上かけて通学している児童もいるという。(華野優気)
Tシャツで元気を
広島と愛媛の生徒たちも豪雨前と違う日常を送る。
広島県三原市の県立総合技術高校は近くの河川が氾濫(はんらん)し、生徒が実習で使う建物は床上浸水。電子機械科の1年生約40人が、1階にあった旋盤などの機械類を使えないでいる。主幹教諭の折田裕之さんは「機械の交換が間に合わなければ、2年生で学ぶ内容の前倒しも検討しないと」と話す。
汚泥が流れ込んだグラウンドの大部分も使えず、9月の体育祭は近くの中学校で開催。平日の部活動はグラウンドの隅や学校の中庭で行っている。県は8月の補正予算で機械類の修理・交換やグラウンド整備の費用を計上したが、整備は早くても10月下旬以降になる見通しだという。
愛媛県宇和島市吉田町の市立吉田中学校は、校舎1階や体育館が浸水。通学路も再び土砂崩れなどの恐れがあるとして、生徒約180人のうち約50人がバスやタクシーで通う。
生徒らは復興への思いを込め、特産のミカンをイメージしたオレンジ色のTシャツを作成。9月の体育祭で着た。3年で生徒会長の檜垣(ひがき)碧位(あおい)さん(15)は「これを着て元気に体育祭に参加して、地域の人たちにも元気になってもらいたかった」と話した。今後もミカンの収穫の手伝いなど復興に向けた活動にTシャツを着て取り組むという。(橋本拓樹、佐藤英法)