「会社が苦しいのは分かっていたが、まさか破綻(はたん)するとは……」。6月29日、東京・秋葉原で開かれた日本海洋掘削の株主総会。出席した株主の男性がため息をついたのも無理はない。東京地裁に会社更生法の適用を申請したのは、総会の1週間前のことだった。
同社は、海洋資源である石油や天然ガスの掘削を日本で唯一手がける専門会社。「リグ」と呼ばれる巨大な掘削装置で世界中の海底に眠る資源を取り出すのが仕事だ。高度成長期の1968年に石油開発公団(現・石油資源開発)や三菱鉱業(現・三菱マテリアル)などが出資して設立され、2009年に東証1部に上場した。
主力のリグ「ジャッキアップ型」は35階建てのビルに相当する高さで、100人以上のクルーが寝泊まりする。資源メジャーと呼ばれる石油開発企業などから依頼を受けて油田を掘り、その工賃が収入になる。リグは1基あたり数百億円。受注を続けながら購入やリースにかかる費用を支払う形で、5基ほどを運用してきた。世界で初めて海底地下のメタンハイドレートからガスを掘り出すことに成功した海洋研究開発機構の地球深部探査船「ちきゅう」もリグの一種で、子会社が運用を受託している。
転機は05年ごろに訪れた。中…