冷蔵しなくても保存できる豆腐の販売が、来年春にも始まりそうだ。冷蔵販売を義務づけていた国のルールが、40年ぶりに見直された。災害に備えた「非常食」にもできる。すでに海外で常温豆腐を販売しているメーカーは、早期の発売を目指している。
常温での販売が認められるのは、「無菌充塡(じゅうてん)豆腐」と呼ばれるものに限られる。製造過程で通常より手厚く殺菌することや、完成前の微生物検査が求められている。長期間保存可能な紙パックに詰められる。メーカーはパックに、8ポイント(縦約2・8ミリ)以上の大きさで「常温保存可能品」と表示する必要がある。
厚生労働省が今年7月に食品製造のルールを改正し、9月下旬には消費者庁が表示ルールを決めた。
業界大手のさとの雪食品(徳島県鳴門市)は来年春ごろ、賞味期限90日程度の新商品をつくり、発売する計画だ。冷蔵販売より配送の手間や運賃が減り、ネット通販でも扱いやすくなると期待する。
同社の村尾誠常務は「扱いたいという問い合わせがもう来ている」と話す。味は、普通の豆腐と変わらないという。技術的には賞味期限を長くもできるが、「風味に敏感な日本人の好みに合わせて設定したい」という。
森永乳業(東京都港区)も来春、売り出す準備を進めている。広報担当者は、「贈答品のカタログなどに載るようにしていきたい」と話す。森永は、牛乳で培った無菌包装の技術を応用して1977年に保存料を使わずに10カ月間、保存できる無菌充塡豆腐を開発。米国など海外で85年から本格販売している。
さとの雪食品もすでに、海外で無菌充塡豆腐を常温販売している。国内では同じ商品を、「要冷蔵」品として扱っていた。
細菌の繁殖を防ぐ目的で、移動販売など一部を除いて冷蔵販売することが74年から義務づけられてきた。海外で食中毒の事例が起きていないことから、業界団体が規制緩和を要望し、約2年前から厚生労働省などが議論していた。(伊沢友之)