ゲーム業界の求人広告会社などと業務委託契約を結んで働いていた女性が自殺したのは、同社社長のパワーハラスメント(パワハラ)が原因だなどとして、女性の遺族や元同僚の男性2人が同社と社長に計約8800万円の損害賠償や未払い賃金の支払いを求める訴訟を17日、東京地裁に起こした。
求人広告会社は「ビ・ハイア」(東京)。訴状によると、女性と元同僚の計3人は2006~14年に入社し、同社や関連会社との業務委託契約を結んだ。しかし、社長の指揮命令を受け、実質的には雇用関係のある従業員として働き続けていたという。
社長は、3人にブランド品のカバンや靴などを買い与え、その費用を会社から社長への貸付金という形で計上した。その自分への債務について、16年ごろから3人のうち2人を保証人にして返済を求めるようになった。
さらに社長は、原告の1人が賃金の情報を知人に伝えたことを「守秘義務違反だ」などと主張し、数千万円の損害賠償も求めるようになった。社長はやがて賃金の天引きなどを始め、3人にはほとんど賃金が支払われなくなったという。
3人の生活費が尽き、家賃を払えなくなると、会社事務所に住まわせ、その家賃も請求するようになった。社長は3人に「生きているだけで迷惑」「殺すと問題があるので、交通事故にあって死んでもらいたい」などと、大声で罵倒するパワハラを繰り返したという。
会社事務所で深夜も働いていることを確認するためにLINEで数分ごとに報告させたり、建物に取り付けたカメラや携帯電話のGPSで行動を監視したりもした。会社事務所での生活は、風呂もなく、寝るときは床にタオルをひく程度だったという。
今年2月、女性が「私は死んだほうがましですか?」という趣旨の発言をしたところ、社長は激怒。女性の目の前で使っていたパソコンを破壊し、「(死んだら)ゴミが増えるだけだ」などと暴言を繰り返した。その日の午後、女性は自殺したという。
原告らは、賃金の天引きは違法で、社長の一連の言動や行為は、原告の人格権などを侵害したパワハラにあたると主張している。
同社は「本日中にコメントしたい」としている。