「いい結論になると今でも自信を持っている。(交渉の)最後の段階では、双方の勇気、信頼、リーダーシップが必要とされる」
17日夜、メイ氏は今後の展望について、こう強がってみせた。ただ、前向きな言葉とは裏腹に、演説の中身は薄かった。同席した欧州議会のタヤーニ議長は会見で、「新しい内容は何もなかった」と語った。
進展がないなか浮上したのが、2019年3月の離脱から20年末まで設けられる激変緩和のための「移行期間」を、さらに1年延長する案だ。英・EU双方は「選択肢の一つ」としたが、メイ英首相にとっては「両刃の剣」でもある。
期間中は、英国はEUの法律や規制などに引き続き従い、予算も負担する義務がある。与党・保守党の強硬離脱派は、EUの縛りから少しでも早く解放され、米国などと貿易協定を結びたいと考えており、反発は必至だ。
EUとの最終的な合意には、国内議会の承認を得る必要がある。保守党は単独過半数に満たず、少しの造反で否決されかねないため、政府は簡単に身動きが取れない状態だ。
それでも交渉を延長しなければならない事情が、メイ氏にはあった。
求心力のないメイ政権の決め切れなさが、交渉をより難しくしている。リトアニアのグリバウスカイテ大統領は「英国が何をしたいのか私たちには分からない。英国自身も何がしたいのか分かっていない。それが問題だ」と述べた。(ブリュッセル=津阪直樹、下司佳代子)
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