「幸せの国」を掲げるヒマラヤの王国ブータンで18日、総選挙(国民議会、定数47)があり、選挙管理委員会によると、外科医のロテ・ツェリン党首(50)が率いる協同党が、格差の是正を訴えて30議席を獲得し、初めて政権の座につくことになった。
下院に相当する国民議会の選挙は、国王親政から立憲君主制へ転換した2008年から実施され、今回が3回目。予備選を勝ち抜いた上位2政党が争う。政権与党の人民民主党は9月の予備選で敗れ、前回に続いて政権交代が確定。08年から13年まで政権の座にあった調和党と、13年に結党した新興政党の協同党との一騎打ちとなった。
ブータンでは、前国王が1970年代に国内総生産(GDP)に代わる指標として、国民総幸福量(GNH)を提唱。その増進が国是となっているが、協同党は格差が広がる現状に注目し、草の根医療や教育の拡充を訴え、支持を集めた。調和党は、政権を担当した実績をアピールし、援助に頼らない経済の自立を主張したが、17議席にとどまった。
選挙では必ずしも争点にはならなかったが、新政権が直面する難題は外交問題だ。伝統的にブータンは軍事、外交、経済面で南隣のインドとの関係が深く、その意向もあって、北隣の中国とは外交関係がなかった。未確定の国境線をめぐり緊張関係が続く一方、中国は今年7月、外交部幹部をブータンに派遣し、国交樹立へ秋波を送っている。(ニューデリー=武石英史郎)