独裁で知られたフィリピンの故マルコス元大統領の妻で、下院議員のイメルダ・マルコス氏(89)が16日、来年5月の中間選挙(上院の半数と下院、地方選)で、北部ルソン島の北イロコス州知事選に立候補を表明した。
イメルダ氏は、1986年の市民革命でマルコス氏とともに追放され、大量の靴のコレクションが「独裁者の搾取の象徴」として世界に知られた。今回の州知事選への出馬は、マルコス家の影響力の健在ぶりを示しているといえそうだ。
中間選挙は、大統領の6年の任期折り返しの年に実施される。北イロコス州はマルコス元大統領の出身地で、州知事は2010年から長女のアイミー・マルコス氏が務めている。16日には、母親に知事職を譲る代わりに、自らは上院選にくら替えして立候補すると表明。地元メディアに、「地方政治のベテランとして、地方の声を中央に届ける」と意気込みを述べた。
マルコス家では、長男のフェルディナンド(通称ボンボン)氏が上院議員で、16年には副大統領選に出馬した。今回の北イロコス州の副知事選には、地方議員を務める孫のマシュー氏も立候補する。当選すれば、元大統領の妻、娘と息子、孫が3世代にわたって政界に進出する形となる。
マルコス政権下の戒厳令では多くの国民が弾圧され、国内では今も反マルコスの感情が残る一方、フェルディナンド氏の大統領待望論もあるほど、根強い支持がある。南部ミンダナオ島が地盤のドゥテルテ大統領は、北部ルソン島での支持を集める思惑からマルコス家と緊密な関係にあるとされ、これがマルコス家の「復権」の背景にあるとも指摘されている。(ハノイ=鈴木暁子)