インド洋の島国モルディブの最高裁は21日、大統領選で敗北した後、不正があったとして、選挙の無効とやり直しを求めていた現職ヤミーン大統領側の訴えを棄却した。5年間の在任中、独裁的な手法で権力をほしいままにしたヤミーン氏だが、来月半ばの政権交代を待たず、権勢の衰えが明白になった。
大統領選は先月23日に投開票された。中国の経済支援を背景に反欧米色を強めたヤミーン政権が、大半の野党幹部や最高裁判事を逮捕して独裁化するなか、公正な選挙の実施は困難とみた国連や欧州連合(EU)は監視団を派遣しなかった。
選挙管理委員会のトップに与党幹部を据えたうえ、警察が投票日当日の未明まで野党の選挙事務所を捜索するなど、あからさまな圧力をかけたが、野党統一候補のイブラヒム・ソリ氏が大差で勝利。ヤミーン氏に批判的だった米国やインドはもちろん、後ろ盾だった中国も選挙結果の尊重を表明した。
ヤミーン氏はいったんは敗北を認めたものの、今月10日になって「選挙で票の操作や不正があった」と最高裁に提訴。身内だったはずの選管と法廷で全面対決する構図になった。
ヤミーン氏から、あからさまな人事介入を受けていた最高裁は「大統領寄り」とみられていたが、ヤミーン氏側が求めた匿名の関係者による証言の採用を拒否。敗訴を予期したヤミーン氏は17日、テレビ演説し、政治弾圧について「すべては国民と国家のためにやったこと」などと弁明していた。
現地からの報道によると、判決を受けて、裁判所の前では市民が歓声を上げた。野党側からは、ヤミーン氏に海外逃亡の恐れがあるとして、出国禁止措置を取るよう求める声が上がっている。(ニューデリー=武石英史郎)