北海道で9月6日未明の地震直後に起きた大規模停電(ブラックアウト)をめぐり、国の電力広域的運営推進機関(広域機関)の検証委員会(委員長=横山明彦・東京大教授)が23日、中間報告をまとめ、震源近くの苫東厚真(とまとうあつま)発電所(厚真町)の停止と送電線故障など複合的な要因で起きたと判断した。
当時、北海道電力は電力需要の約半分を道内最大の火力発電所である苫東厚真の3基でまかなっていた。中間報告では、苫東厚真の3基が相次いで停止したことに加え、送電線事故による水力発電の停止などで供給力が低下。これに見合うように需要を減らすために一部地域を強制的に停電させる措置を3回とったが、防ぎきれず、国内初のブラックアウトに至ったとした。
そのうえで、北電の発電設備のあり方や運用については「不適切な点は確認されなかった」とし、北電の経営責任には触れなかった。経済性を重視するあまり、発電コストが安い苫東厚真に過度に依存する「集中立地」も論点だったが、「別途、国や広域機関で検討する必要がある」と先送りした。
当面の再発防止策としては、強制停電できる量を北電が当時想定していた146万キロワットから、35万キロワット引き上げることなどを提言した。中長期的な課題として、北海道と本州の送電網を結ぶ北本連系線について「さらなる増強の是非を早期に検討する必要がある」と指摘した。
地震や大規模停電によって、9月の道内の観光業の宿泊キャンセルは114万9千人分にのぼり、交通費や飲食代などを含めて356億円の被害があったとされる。これとは別に、停電による商工業の被害額も135億円(いずれも道庁調べ)にのぼる。
エネルギー産業に詳しい橘川武郎・東京理科大教授は「北電がなぜ一極集中を続けたのか、この経営判断が妥当だったか、誰かが検証しなければ、道民の納得を得られないのでは」と指摘する。(長崎潤一郎、関根慎一、桜井林太郎)
中間報告の主なポイント
○今回のブラックアウトは主に、苫東厚真発電所3基の停止と、送電線事故による水力発電の停止の複合要因で発生
○北電の設備形成や運用について、不適切な点は確認されなかった
○経済性を含む総合的な検討・検証は、別途、国などでなされる必要がある
○北本連系線はさらなる増強の是非を早期に検討する必要がある
○今後、我が国でブラックアウトは発生しうるとして改めて検討が必要