日中両国を取り巻く国際関係や力関係が変わるなか、約40年にわたり日本政府が行ってきた中国への途上国援助(ODA)が今年度で終了することになった。対中ODAが果たしてきた役割、新たな経済協力のあり方、そしてその終了が両国関係にもたらす意味について、日中関係に詳しい静岡県立大の諏訪一幸教授に聞いた。
中国へのODA終了へ 40年で3兆円、近代化支える
政府の途上国援助(ODA)が日中関係で果たした役目は極めて大きい。対中ODAが始まったのは、中国で改革開放政策の方針が決まった翌年。まさに新しい中国がスタートラインに立った時で、中国側が先進国からの援助を期待していた。当時の日本には戦争賠償的な意味もあったし、民主化を促す狙いもあったと思う。78年に平和友好条約を結んだばかりでいい流れにあった日中の象徴がODAだった。
経済大国となった中国側のODAへの需要は高くはなかっただろう。日本からの援助を終えることは、大国としてのプライドを取り戻すことを意味する。日本側にとってみれば、中国への援助を終了することで、中国とパートナーとしての新たな関係を築いていく決意表明をしたとも言える。
パートナーとしての関係を築く意味でも、共同で進めていくという途上国援助は失敗が許されない。中国は「一帯一路に日本が協力する」とうたうだろう。援助される国に巨額債務を残す中国の手法は「新植民地主義」とも批判される。日本はそうした事態の歯止め役となり、存在感を示さなくてはならない。(聞き手・高田正幸)