9月6日の北海道胆振(いぶり)東部地震で大きな被害を受けた厚真(あつま)、安平(あびら)、むかわの3町で1日、被災者の応急仮設住宅が完成し、入居が始まった。3町では1日朝の時点で300人近くが避難所生活を続けていた。11月末までに223戸が建設され、希望者全員が入居できる見通しだ。
道の発表によると、3町の地震による家屋の全半壊は、36人が亡くなった厚真町で470戸、安平町が419戸、むかわ町が136戸。
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今回は、9月末に着工した第1期の計130戸が完成した。建設された仮設住宅は、寒冷地仕様で、壁や天井、床に厚めの断熱材が入り、窓は二重サッシ。原則、2年間入居ができて家賃は無料。光熱費は自己負担になる。
むかわ町役場では1日午前9時から鍵の受け渡しが始まった。気温は6・2度で防寒着を身にまとった住民たちが、役場2階の窓口に次々と訪れ、仮設住宅の設備の説明を受けていた。
11月末までに完成予定の第2期は計93戸。うち15戸はトレーラーハウス型などで、農家や酪農家の被災者が作業現場近くに設置できるものになる予定だ。
「仮設に入れてほっとした」
むかわ町の工藤弘さん(65)は地震で家が全壊し、親戚宅に身を寄せていた。1日に鍵を受け取って早速、妻(60)と長男(31)と共に仮設住宅に入居し、「仮設に入れてほっとした」と語った。
工藤さんは町内で約300部を配達する新聞販売所を営む。9月6日午前3時過ぎ、朝刊を配達中に激しい揺れに襲われた。家に戻ると、築40年以上の住宅兼店舗の1階が押しつぶされていた。配達に出る前は自宅の1階にいた。「家を出るのがあと少し遅かったら死んでいたかもしれない」と振り返る。
地震後は、避難生活のかたわら、「大勢の人に情報を届けたい」との思いから、かろうじて倒壊を免れた自宅裏の倉庫などを拠点にして、配達を続けた。
一方で、3年前に「副業」として新聞販売所の一角で始めた、たい焼き店「いっぷく堂」は、休業を余儀なくされている。なるべく早く再開したいが、店舗の確保のめどがなかなかつかないという。
1日は役場に一番乗りして鍵を受け取った。午前9時半ごろに、3Kの間取りの住宅に入ると、ぐるりと見回し、「広さは欲を言うときりがない。寒さは心配だったけど、気密性は高そうだ」。友人たちに手伝ってもらって冷蔵庫など家財道具を運び込んだ。「(入居期間の)これから2年の間に、どう生活を再建していくかを考えたい。前に進まなければ仕方がない」と話した。(平賀拓史、遠藤美波、今泉奏)