北海道胆振(いぶり)地方を震源とする地震から6日で1カ月が経った。地震は道内ほぼ全域にまたがる停電を引き起こし、相次ぐ余震は主要産業である観光業に影を落としている。道庁によると、宿泊キャンセルは9月30日までに延べ114万9千人、交通費や飲食・土産物代を含む影響額は356億円に上っている。
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停電は2日間弱で99%が解消したが、キャンセル数は、観光・体験施設が21万人、フェリー・遊覧船が3万3千人、レンタカーが3万8千台だった。北海道体験観光推進協議会によると、道外から修学旅行で訪れる中高生のキャンセルは約1万7千人を超えた。年間の修学旅行生約14万人の1割にあたる。
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北海道で震度7、道内の被害状況は
昨年度、北海道を訪れた外国人観光客は279万人と過去最多だった。その鈍化も懸念される。登別温泉(登別市)の土産店「玉川本店」の玉川裕史社長(67)は「これまでなら、昼はどこの飲食店も外国人の列ができるのだが」とこぼし、「今来てくれている人たちが北海道の良い印象を口コミで広げてくれるのを待つしかない」と話した。
今年は北海道地震を含め、7月の西日本豪雨や関西空港が機能を失った9月の台風21号など、観光業にも影響を与える災害が続いている。
道庁や観光関連団体は、観光地の動画を流すなど「元気な北海道」の発信に力を入れる。政府は10月1日、約80億円の補助金で旅行会社や宿泊施設に割安な北海道ツアーを販売してもらい、観光客を増やす割引制度「ふっこう割」を始めた。外国人観光客に対しても最大5泊まで支援する。
関西地方では政府や民間業者が連携し、「関西インバウンド観光リバイバルプラン」を実施。空港の復旧状況を発信するほか、関西空港発着分の運賃値下げといった割引商品を出し、外国人観光客の呼び込みを図っている。
外国人を災害時、どう支援するかも課題だ。民間調査会社サーベイリサーチセンターは、地震時に北海道にいた外国人185人に「地震発生時に困ったこと」を尋ね、「外国人向けの避難マニュアルがない」(22%)、「スマートフォンなどで多言語の災害情報がない」(18%)といった回答を得た。同様の声は台風21号の被災時でも寄せられ、政府は先月28日、▽多言語による相談体制の確立▽SNSで災害情報発信――など外国人観光客への緊急対策に取り組むと発表した。(伊沢健司、斎藤徹、山下寛久)