多くの建物が壊れた北海道地震で、自治体による家屋の被害調査をめぐり、認定の違いで公的支援に差が出ている。認定の多くは「一部損壊」で、原則、支援金は受け取れず、仮設住宅にも入れない。災害のたび、こうした線引きの「不公平」が指摘されており、弾力的な支援の必要性を求める声が上がっている。
災害対策基本法に基づく家屋調査の基準について、国は屋根や壁、柱など建屋の損傷状況に応じ、被害が50%以上なら全壊、40%以上50%未満が大規模半壊、20%以上40%未満が半壊、20%未満が一部損壊としている。今回の地震で道庁は住宅8879棟の被害を確認(4日時点)。うち約85%にあたる7503棟は一部損壊だ。
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北海道で震度7、道内の被害状況は
一部損壊と認定されると、公的支援の枠組みは小さくなる。被災者生活再建支援法では、都道府県の基金と国の補助金を財源に、全壊世帯に最大300万円、大規模半壊に同250万円、半壊でも解体すれば少なくとも100万円が支給される。一部損壊は対象外だ。
仮設住宅の入居基準についても、国は災害救助法に基づく運用で「大規模半壊以上」としている。道庁は2016年の熊本地震や今年7月の西日本豪雨の先例を踏まえ、半壊であっても、二次災害の恐れなどで長期にわたって住めない家屋を「全壊相当」として入居を認めることにした。
ただ、一部損壊では原則仮設に入れない。液状化の被害が出た札幌市清田区。ここで暮らしていた男性(68)宅は約40センチ傾いたが、市の調査で一部損壊と認定された。家屋の傾きで自宅にいると気分が悪くなる。みなし仮設住宅への入居を希望するが、対象外だ。「被災しているのは同じなのに、わずかな違いで支援されないのはおかしい」と訴える。
1200棟超が損壊した厚真(あつま)町に住む男性(81)の自宅も一部損壊と認定された。家は傾き、排水管も外れて水が流れない。今の蓄えでは新居を建てるのは難しく、補修も数十万円以上かかる。「何とか仮設に入りたい」と望むが、見通しは立っていない。
2900棟以上が被災した安平(あびら)町。9月23日に開かれた仮設住宅の説明会で、出席者から「暖房が壊れて住めないのに、半壊以上でないと入れないのか」などと、不満を訴える声が出た。町の担当者は「良い方法がないか、個別の相談に応じながら考えたい」と述べるにとどまった。
過去の災害でも不満の声
一部損壊が公的支援の枠組みから漏れる問題をめぐっては、過去の災害でも被災者から不満が出ていた。
西日本豪雨で約5千棟が全半壊した岡山県倉敷市。床上浸水でも一部損壊と認定されるケースがあり、被災者から「何らかの補助がほしい」という要望が寄せられた。ただ、県として救済の仕組みはなく、伊原木隆太知事は9月の県議会で対応を問われ、「国の支援策の見直しを注視したい」と答弁した。
独自の援助策を設ける自治体も出ている。約15万4千棟が一部損壊した熊本地震でも、一部損壊と判定された被災者から、「なぜ支援がないのか」といった声が相次いだ。これを受け、熊本県は一部損壊でも修理に100万円以上かかった世帯に対し、義援金から10万円を配布する仕組みを作った。
また大阪府は6月の大阪北部地震の後、一部損壊も対象にした無利子融資制度を新設。全国知事会は11月にも、被災者生活再建支援金の支給対象を拡大するよう政府に要望する考えだ。
支援制度のあり方について、内閣府の政策統括官は「制度の対象拡大には財政負担が伴う。導入の可否は慎重に検討する必要がある」としている。(桑原紀彦)