トヨタ自動車は1日、毎月の会費を払えば、複数の車種を乗り換えながら借りることができる新しいサービスを始めると発表した。2019年初めに東京都内の販売店を通じて実験的に導入し、国内の他地域や海外への展開も検討する。消費者の関心が「所有から利用」に変わるなか、幅広い顧客の獲得をめざす。
月定額、レクサスなど乗り換え放題 トヨタが新サービス
トヨタによると、国内の自動車メーカーとしては初めての取り組み。例えば、仕事には高級セダン、レジャーにはSUV(スポーツ用多目的車)など利用者は用途に応じた車を選べる。税金や保険、メンテナンスなどの費用は会費に含まれている。若い世代や転勤の多い人を主な利用者として想定しているという。
新しいサービスの名前は「KINTO(キント)」。「必要な時にすぐあらわれ、思いのままに移動できる」というイメージから、西遊記に登場する「筋斗雲(きんとうん)」にちなんだという。選べる車種や、月々の料金など詳細は今後検討していく。
このようなサービスは「サブスクリプション(定額制)」と呼ばれ、インターネット上の音楽ダウンロードサービスなど、さまざまな業種に広がっている。車については海外で始まっており、独ポルシェの場合、米国の一部地域で月々2千ドル(約22万円)から提供している。
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あわせてトヨタは1日、国内販売の改革案をまとめ、公表した。4系列に分かれている販売店を「一本化」するほか、顧客が車を買わなくても利用できるようなサービスの充実などが柱。この日、全国の販売店経営者を名古屋市内に集め、概要を伝えた。
トヨタ車の販売店は「トヨタ」「トヨペット」「カローラ」「ネッツ」の4系列が異なる車種を扱ってきたが、2022~25年をメドに、すべての店舗で全車種を扱う。あわせて、現在50以上あるトヨタ車の車種については、25年ごろに30ほどに絞り込む。
改革はトヨタが直営する東京都の販売店から開始。来年4月に販売4社を統合したうえで、系列の名称を廃止して、各店舗の看板も統一する。一方、独立した資本が多数を占めるほかの地域については、顧客とのつながりなどを考慮し、系列の名称は維持したままですべての車種を取り扱えるようにする。
1台の車を複数の人が共有するカーシェアリング事業も新たにスタートする。販売店の保有する試乗車を活用し、インターネット予約を通じて車を貸し出す。事業に必要となるスマートフォン向けのアプリや決済システムは、トヨタ側から販売店に提供する。年内に東京都内で始め、19年中ごろには全国へ広げる。
現在、トヨタの国内販売台数は年間150万台ほど。1日に会見した佐藤康彦専務役員は、25年ごろに120万台に落ち込むとの予想もあるとしたうえで、「シェアリングなど車の使い方を広げ、150万台の維持を狙う」と話した。(初見翔)