職場のパワーハラスメント(パワハラ)防止策について、厚生労働省が6日、三つの具体案を公表した。労働者側が導入を主張する、パワハラ行為を禁止するなどの「法制化」の2案と、使用者側が求める法的な強制力がない「ガイドライン(指針)の策定」で、防止策を議論している労働政策審議会(厚労相の諮問機関)の分科会が年内に結論を出す方針だ。
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厚労省は、これまでに分科会で出た意見を集約する形で、三つの案をこの日の会合に提示した。
「法制化」の具体案は、①パワハラ行為を禁止して加害者に損害賠償を求められるようにする②事業主にパワハラ防止の措置を講じることを義務づける――の二つが示された。
一方、「指針の策定」については、企業の自主的な取り組みを促す「法的強制力がないケース」だけでなく、事業者に防止措置を義務づける法制化をする際に細かい規定を指針で定める「法的根拠を持たせるケース」の両方が想定されているとした。
これまでの議論では、労使の意見は大きく隔たっている。この日の会合でも、労働者側が「パワハラ被害で心の病になる人は増えており、自殺に至る例もある。被害が深刻化する中、対策の強化が必要だ」として法制化の必要性を強調。使用者側は「まずはガイドラインで周知することが現実的だ」と、従来通りの主張を繰り返した。
一方、中立的な立場で出席している公益委員の学識者からは「社会的情勢を考えると、法制化は当然のことだ」との意見も出た。
厚労省は、この日の会合までに出された意見を元にして報告書の骨子の素案をつくる。同じ分科会で議論している「女性活躍推進法」の見直しに関する骨子の素案もまとめ、合わせて次回の会合で示す方針だ。(村上晃一)