自動車にかかる税金をめぐり、経済産業省と総務省の対立が深まっている。経産省は来年10月の消費増税や米国との通商交渉を控え、大幅減税を主張。自動車の税金の大半は地方税収になるため、総務省は「代替財源が必要」と譲らず、来年度の税制改正に向け、議論は難航しそうだ。
「今年は車体課税の勝負の年だ」。来年度の税制改正要望を聞くため、6日に開かれた自民党の経済産業部会で経産省の担当者はこう切り出し、自動車減税の必要性を訴えた。
経産省の要望の柱は、毎年かかる自動車税の大幅な減税だ。現在は排気量に応じて年2万9500~11万1千円がかかるが、年1万円ほどの軽自動車税を基準に引き下げるよう要求。仮に排気量1ccあたりの税額を軽自動車税並みに下げれば、最も排気量の少ない乗用車でも年1万3500円の負担減となる。
消費増税対策として、自動車の購入時にかかる税負担の軽減も求めた。2%の増税で、乗用車を買う人が払う消費税は年1700億円増えるとの試算もあり、経産省は「消費税分に見合うだけの十二分な取得減税を」と訴える。
年明けには日米物品貿易協定(TAG)の交渉開始も控える。経産省は、自動車の国内生産の2割を占める米国向け輸出に高関税が課されれば、大量の雇用が失われると強調。電気自動車や自動走行などの新たな開発競争で勝ち抜くためにも、減税によって国内市場を強化する必要があると訴えた。
しかし、この日の部会では、総務省に近い議員たちが猛反発。自動車の税金の大半は、地方自治体に入り、道路整備などに使われているからだ。議員の一人は「経産省の案だと、地方財政に3500億円の穴があく。これだけでアウト。絶対通らない」。別の議員も「地方では道路をつくってほしいという要望の方が強い」と声を張り上げた。
2016年度の自動車に関する国と地方の税収は計約2・6兆円で、総務省は代わりの財源がなければ減税はできないと主張している。
自民党税制調査会の宮沢洋一会長も「地方財政に影響が出ないように、いい知恵が出るかどうかだ」と話しており、年末にまとめる与党税制改正大綱の最大の焦点になる見通しだ。(伊藤舞虹)