日本や中国、東南アジア諸国連合(ASEAN)など16カ国が参加する自由貿易圏構想「東アジア地域包括的経済連携(RCEP〈アールセップ〉)」をめぐり、年内に主要分野で合意する「実質妥結」が見送られることになった。関税の引き下げ幅でインドが中国や豪州などと合意できなかったためだ。各国は来年秋に完全な妥結をめざすが、世界人口の半分を占める巨大経済圏をつくる交渉は漂流するおそれもある。
「実質妥結はなくなった。14日の首脳会合では来年まとめると宣言してもらいたい」。12日昼過ぎから夜まで続いたシンガポールでの閣僚会合後、経済産業省幹部は疲れを見せた表情で述べた。
交渉開始から5年以上経ったRCEPの参加国が今年の目標にしたのが「実質妥結」だ。一気にすべて妥結するのは難しいため、まずは関税の引き下げ幅や電子商取引などの共通ルールの内容といった主要分野で合意し、残りを来年まとめる筋書きだった。
早期妥結へ各国の背中を押したのは、保護主義的な動きを強めるトランプ米政権の存在だ。米と二国間交渉を控える日本、アジア主導の自由貿易圏をつくりたいASEANだけでなく、米国との貿易摩擦を抱える中国も交渉に前向きな姿勢に転じた。12日の会合で最終的な詰めを議論し、14日の首脳会合で「実質妥結」の宣言をめざした。
だが、インドとの交渉がまとまらなかった。昨年度のインドの貿易赤字は対中国が全体の4割、630億ドル(約7兆2千億円)を占める。安い日用品や工業品などが中国からインド国内に流入し、関税引き下げを安易に受け入れられない。加えて中国の不透明な国内産業保護策も不満だった。
インドは来年に総選挙を控えていることもあり、今回の実質妥結を拒んだ。参加国の交渉関係者は「インドが抜けると(世界人口の半分をカバーする)RCEPの魅力は半減する」として、各国はインドの主張を受け入れた。
複数の交渉関係者によると、こ…