オーストラリアのメルボルンで9日に起きた切りつけテロ事件で、刃物を振り回す男を止めようと、買い物カートで立ち向かったホームレス男性への賛辞が広がっている。「トロリー(買い物カート)マン」として有名になった男性のために寄付も募られ、12日夕までに約12万5千豪ドル(約1千万円)が集まった。
地元メディアによると、男性はマイケル・ロジャースさん(46)。カートで立ち向かう際に一度はバランスを崩して転倒したが、駆けつけた警察官らと再び男に向き合った。この様子を映した動画がネットで広がり、ホームレス支援団体の女性が「彼はヒーローだ」と資金集めサイトで寄付を呼びかけた。本人は「ただ、人助けになることをしたかった」と話している。
事件では、男が繁華街に止めた車を炎上させた後で、車外に出てナイフで市民1人を殺害、2人にけがをさせた。男は警官に銃で撃たれ、病院で死亡した。
過激派組織「イスラム国」(IS)が犯行声明を出したが、警察はISの直接の関与はなく、男がISに感化されたとみている。男はソマリア出身で、シリアの内戦に加わる恐れから豪政府が2015年に旅券を無効にしていたほか、男の弟が昨年、メルボルンで大みそかに爆破テロを起こすことを企てた疑いで逮捕されていた。(シドニー=小暮哲夫)