スリランカのシリセナ大統領は議会を解散し、来年1月5日に総選挙を行うことを決めた。これに対し、対抗する政治勢力は解散を憲法違反だとして提訴。政局の混乱は、中国とインドが主導権を争うインド洋周辺の勢力図にも影響を与えかねない。
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大統領は10月末にウィクラマシンハ首相を解任して前大統領のラジャパクサ氏を後任に据えたが、首相は無効を訴えてポストに居座り、大統領派と首相派がそれぞれ議会の多数派工作を続けていた。大統領は過半数を確保する見通しが立たなくなり、議会解散に踏み切ったとみられる。
シリセナ大統領は2015年の大統領選で、ウィクラマシンハ氏の政党と協力。当時のラジャパクサ大統領の強権的な手法や中国への過度な傾斜を批判して勝利した。双方は連立政権を樹立したが、議会では首相派の数が大統領派を上回っていた。
その後、政権運営の過程で、国内産業の保護を重視する大統領と、インドとの経済関係強化を目指す首相が対立。大統領はスリランカの内戦を終結に導いたラジャパクサ氏の行政手腕に期待し、政権の安定化を図ろうとしたとみられている。
再び中国に傾倒?
スリランカ政府関係者は「経済政策は首相の側近で決めてしまい、後から大統領に知らされることもあった。大統領の不満は高まっていた」と指摘する。
ラジャパクサ氏は05~15年に大統領を務め、中国からの融資で港湾や空港など大型インフラ事業を次々と推進。今回の復権が確実になれば、スリランカが再び中国に傾斜する可能性を指摘する声もある。スリランカの政治研究者は「インド洋を自国の裏庭とみるインドとの関係に問題が生じるだろう。スリランカの港湾開発などを手がける日本との関係にも影響が及ぶ可能性がある」と話す。
一方、インド防衛研究所(IDSA)のアショク・ベフリア研究員は「中国への過度な依存で借金漬けになってしまった反省はラジャパクサ氏にもあるはずだ」と話し、どちらが勝利しても中印との関係に大きな変化はないとみている。(ニューデリー=奈良部健)
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ウィクラマシンハ氏の統一国民党(UNP)などは12日、大統領による議会解散は憲法違反だとして、決定の無効化を求めて最高裁に提訴した。
憲法の規定では、選挙から4年半が経過する2020年より前に議会を解散するには、議員の3分の2の賛同が必要。首相の解任も大統領には権限がないとされる。