2015年8月に大阪府寝屋川市の中学1年の男女2人を殺害したとして殺人罪に問われた山田浩二被告(48)の裁判員裁判で、検察側の論告求刑が21日午前、大阪地裁であり、検察側は「身勝手な犯行で、強い非難に値する」として死刑を求刑した。一方、弁護側は最終弁論で殺人罪の成立を否定し、情状酌量を求めるとみられる。
検察側は、被告が15年8月13日未明、京阪電鉄寝屋川市駅前付近で平田奈津美さん(当時13)と星野凌斗(りょうと)さん(同12)を自分の軽ワゴン車内に乗せ、同日深夜までに殺害したと主張している。被告の犯行を直接示す証拠がなく、客観証拠を積み上げて立証してきた。
論告では、遺体のうっ血の痕跡や歯や骨の変色から、2人の死因は首の圧迫による窒息死と説明。「被告は首の圧迫を死の危険性が高い行為だと認識していたはずで、殺意は明らかだ」と主張した。
犯行動機の解明につながる証拠は乏しかったが、論告では星野さんについて、事件当日に知り合ってある程度の時間を一緒に過ごしたことから「何らかのトラブルが生じたことは合理的に推認できる」と指摘。平田さんについては「星野さん殺害を隠す口封じと考えられる」とした。
量刑については、被告に発達障害の傾向はあっても完全責任能力があったとし、「生命への敬意がみじんも感じられず、2人を殺した中でも極めて重い部類」のケースだと非難。不合理な弁解で「責任逃れに終始している」として極刑を求めた。
また被害者参加制度に基づき、各遺族を代理する弁護士もそれぞれ死刑を求める意見を述べた。
一方、弁護側はこの日午後に最終弁論を行う。主に被告の供述に基づき、星野さんの死因は体調不良で被告は救護措置をとらなかった保護責任者遺棄致死罪に当たると反論。平田さんについては、車内で「自宅に帰りたくない。帰るなら警察に言う」と大声を出されたことなどから、口をふさぐうちに誤って首を押さえてしまったとして、殺意はなく傷害致死罪にとどまると主張する見通しだ。
さらに、出廷した精神科医の証言などを踏まえ、犯行当時は心神耗弱状態だったと主張し、今月1日の初公判で土下座して謝罪した被告は被告人質問でも改めて事件の反省と遺族への謝罪を表明するなど反省を深めているとして、寛大な刑を求めるとみられる。(畑宗太郎、多鹿ちなみ)