かつて服用した妊婦の子に重い障害を引き起こし、現在は血液がんの治療薬に使われているサリドマイドについて、薬の副作用を防ぐ仕組みを名古屋工業大の柴田哲男教授(フッ素化学)らの研究グループが解明した。より安全な薬の開発に役立つと期待される。20日付の英科学誌サイエンティフィック・リポーツに発表された。
サリドマイドは右手型、左手型と性質の違う二つの構造を持つ。左手型だけが副作用を起こすとの報告があるが、仕組みは謎だった。
研究グループは試験管に左手型より右手型が多い混合液を加えて観察。右手型と左手型がくっついた結晶と、余った右手型の溶液に分離することが分かった。結晶化すると体内に吸収されにくく、安全で吸収されやすい右手型だけが作用すると考えられるという。
サリドマイドは1950年代から60年代に薬害を起こし、国内では推定1千人が被害を受けた。08年に多発性骨髄腫の治療薬として再承認されたが、妊婦の服用などが禁じられている。
柴田教授は「安全な薬の開発を進めるうえで重要な手がかりになる」と話している。(西川迅)