2004年に廃止になった東京・上野公園の地下駅「旧博物館動物園」が、アートで彩られ、23日から来年2月24日まで公開される。22日に作品の「アナウサギを追いかけて」が発表された。
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作品は演出家の羊屋白玉(ひつじやしろたま)さん、造形作家のサカタアキコさん、国立科学博物館の森健人・支援研究員が手掛けた。駅を管理する京成電鉄や近くにある科博、上野動物園に取材。「不思議の国のアリス」を想起させる作品に仕上げた。
公開に合わせて、京成は安全確保のための改修をしたが、塗装がはがれかけた壁や落書き、各種表示板、木製改札などはそのままにし、昭和初期の雰囲気を残した。駅入り口を覆う西洋風のドームも往時のレリーフが見られる。
地下に下りる階段手前のスペースには地面に頭をめり込ませた、高さ約5メートルのウサギの巨大なオブジェが登場。その後ウサギに扮した演者にいざなわれ、観覧者は地下へと進む。
御料地だったため昭和天皇の勅裁を受けて駅を建設したり、手掘りで馬蹄(ばてい)形のトンネルを通したり、ホームにペンギンやゾウの絵が描かれていたりといった、逸話が映像と共に語られる。
ウサギのツアーは、約20分。バイオリン演奏を聞いたり、上野動物園で1997年に死んだパンダのホアンホアンやシマウマなどの骨格標本の展示を見たり、と続く。ホームは公開されないが、新たに設置されたガラス扉越しに、薄暗い改札や切符売り場の様子はうかがえ、鉄道ファンも楽しめそうだ。
今回の計画は、上野の文化施設や学校、企業が連携し、障害や年齢などを超えた交流を目指すアートプロジェクト「UENOYES(ウエノイエス)」の一環。駅そばにある東京芸術大の日比野克彦・美術学部長が、京成電鉄に計画を提案し、五輪に向けて街づくりを模索していた同社が応じた。駅は33年に開業したが、乗降客の減少で97年に営業を休止、04年に廃駅になっていた。
駅舎内やオブジェ、標本は原則金、土、日曜日の午前11時~午後4時に無料で見られる。ウサギのツアーは、ネットで予約(
https://goo.gl/D52rzR
)が必要。24日には、作家や京成社員らによるトークイベントも上野公園の野外ステージである。詳細は(
https://uenoyes.ueno-bunka.jp
)。(木村尚貴)