金融庁は、地方銀行の西京銀行(本店・山口県周南市)に立ち入り検査する方針を固めた。同行を巡っては、不動産会社が新築アパート投資の資金を引き出すため、改ざんした融資書類を提出した不正が判明している。融資は実行されなかったが、金融庁はスルガ銀行(静岡県沼津市)の不正問題を受けて不動産融資の監督を強めており、西京銀側の審査体制も点検することにしたとみられる。
不正は今年8月、東証1部上場の不動産会社TATERU(タテル、東京)での新築アパート向け投資で判明した。同社の従業員が融資審査を通りやすくするため、新築アパートに投資したい顧客のネットバンキング画面を改ざんして預金残高を多く装っていた。不正は融資の実行前に判明した。タテルと西京銀は、同様の不正がほかになかったかを調査中だ。
金融庁は不正が他にもあった可能性があるとみて、西京銀の審査体制に不備がないか懸念している模様だ。そのため近く立ち入り検査に入り、問題の融資申し込みの経緯や審査の仕方に問題がなかったかを調べる。
金融業界では不動産投資向け融資で、すでに不動産業者による不正が複数発覚している。業者が自己資金の少ない顧客の通帳コピーなどを改ざんして預金残高を水増しし、銀行に提出して多額の資金を引き出すケースが相次いだ。銀行が不正を見抜けなかったケースだけでなく、スルガ銀行のシェアハウス融資のように、多数の行員が融資実績を上げるために不正に関与したケースもあった。スルガ銀は金融庁から10月に一部業務停止命令を受けた。
スルガ銀の問題を受けて金融庁は地域金融機関を中心に不動産融資への監督を強めている。不動産投資向け融資に積極的だった信用金庫大手の西武信用金庫(東京都)にも近く立ち入り検査に入る。(山口博敬、藤田知也)