1980年代後半に大学ラグビーを席巻した「モスグリーン旋風」の再来を期し、大東大が関東リーグ戦2連覇に王手をかけた。首位を快走し、25日の最終戦で2位東海大と対戦する。チームを引っ張るのはトンガ出身の双子。あのレジェンドOBが、ある「格言」で2人を導いた。
ラグビーワールドカップ2019
そのOBとはラトウ志南利(しなり、53)。トンガから85年に来日し、突破力抜群のFWとして86、88年度の大学日本一の立役者となった。当時は珍しい海外からの留学選手。ジャージーの色からモスグリーン旋風と呼ばれた大東大躍進の象徴的な存在だった。
日本代表や三洋電機(現・パナソニック)でも活躍し、引退後は母校の監督を経てアドバイザーに。指導と留学生の勧誘を担う。
彼が目をかけたのが、いま、豪快な突進で復活への旗頭となっているロックのタラウ・ファカタバ、ナンバー8のアマト・ファカタバの双子(4年)だ。
5年ほど前、ニュージーランドの高校でプレーする息子から「日本に興味を持つチームメートがいる」と2人のことを知らされた。試合を見ると、天性のパワーに魅せられた。話してみると「とてもまじめ。日本向きだと思った」。留学が決まった。
ラトウは二つの極めてシンプルな「格言」を繰り返し伝えた。「食べ過ぎるな」、そして「練習をさぼるな」。
なぜこの2点なのか。こう意図を説明する。「トンガには太りやすい体質の人が多い。体が重くなりすぎれば、当然、走れなくなる。日本のように毎日、練習するチームもない。練習を乗り越えなければ試合には出られない」
2人は教えに従った。「いつも『もっと頑張れるよ』と(ラトウが)激励してくれる」と兄のタラウ。弟のアマトは仲間への感謝を忘れない。「みんながパスをつないでくれるから、僕らがボールキャリー(前進)できる」
「脂っこい食べ物は控えている」と口をそろえ、タラウは194センチ、120キロ、アマトは195センチ、118キロの体格をキープ。もっとも、日本人に比べれば大食漢であることに変わりはなく「回転ずし店に行けば、好きなサーモンだけでそれぞれ30皿ずつは平らげる」と後輩が証言する。
25日の東海大戦(秩父宮)は、勝利か引き分けで9度目のリーグ戦制覇が決まる。すでに全国大学選手権出場を決め、昨年度の4強を上回る成績、24大会ぶりの優勝へ周囲の期待は高まっている。(中川文如)