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虚偽記載、総額80億円か ゴーン前会長の再逮捕も視野

日産自動車の経営トップを20年近く務めたカルロス・ゴーン容疑者(64)の逮捕から、26日で1週間を迎える。退任後の報酬を隠したとされる容疑に対し、ゴーン前会長側は否認する構図が固まった。


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19日夕、羽田空港。東京地検特捜部はビジネスジェット機で着陸したゴーン前会長に接触し、そのまま逮捕した。


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適用された罪名は、金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)。代表取締役だった側近のグレッグ・ケリー容疑者(62)と共謀し、2010~14年度の5年分の自らの役員報酬について、毎年約10億円、計約50億円を記載しなかったという容疑だ。


同法はこれまで、企業が損失を隠して業績を良く見せかける粉飾決算事件で主に使われてきた。役員報酬の非開示を対象にするのは初めてとみられる。


一連の経緯を知る会社関係者は「形式犯だ」と指摘し、「ゴーン前会長ほどの人物を形式犯で社会的に抹殺するのはいかがなものか」と疑問を示す。一方、東京地検の久木元(くきもと)伸・次席検事は22日の記者会見で、役員報酬の開示は「ガバナンス(企業統治)にゆがみがないかを投資家が判断するうえで重要だ」とし、「形式犯」との批判に反論した。


虚偽記載容疑の手口も明らかになってきた。


複数の関係者によると、きっかけは、09年度の決算から、1億円以上の報酬を得た役員については名前と金額の個別開示を義務づけた制度改正だったという。


ゴーン前会長は改正前の20億円前後の報酬を維持しようとしたが、そのまま開示すると「高額だ」と批判されると懸念。開示する報酬を約10億円にとどめる「裏の仕組み」(関係者)の構築をケリー前代表取締役に指示し、メールなどでやり取りしたという。


特捜部は、ゴーン前会長と日産が毎年交わした文書を入手。そこには、年収総額を約20億円と明記したうえで、その年に受け取る約10億円、退任後に受け取る約10億円が分けて記載されていた。ケリー前代表取締役は、前会長の退任後の報酬を蓄積するため、経理部門も見抜けないよう経理操作していたという。


特捜部は、実行役とされる外国人執行役員と日本人幹部の2人と「司法取引」した。捜査に協力する見返りに刑事処分を減免する制度で、今年6月に導入されたばかりだった。


特捜部は、15~17年度の直近3年分でも同様の手口で約30億円の報酬を隠していたとみて再逮捕も視野に調べる方針。虚偽記載容疑の総額は8年分で約80億円に達する見通しだ。事業主体の法人も罰する「両罰規定」を適用して日産も立件する方向で、有罪の場合は7億円以下の罰金となる。


一方、ゴーン前会長の弁護人には、東京地検特捜部長として旧ライブドアの粉飾決算事件や村上ファンドのインサイダー取引事件を手がけた大鶴基成弁護士が就いた。ケリー前代表取締役の弁護は、故・三浦和義氏の「ロス疑惑」事件などで無罪を勝ち取ってきた喜田村洋一弁護士が担う。


両弁護士は、小沢一郎衆院議員の資金管理団体「陸山会」の事件を含め、かつては検察側と弁護側の立場で対峙(たいじ)してきた関係だけに、弁護方針をめぐる「連携」にも注目される。


ゴーン前会長をめぐっては、逮捕容疑以外にも「会社の私物化」を疑わせる様々な疑惑が浮上。ブラジルやレバノンの高級住宅を会社側に購入させて家族で利用したり、業務実態がない姉に年10万ドル前後を支出させたりしていたという。株価に連動した報酬が受け取れる権利を約40億円分、開示しなかった疑いもある。


特捜部は、司法取引で入手した資料に加え、逮捕後の家宅捜索で押収した資料を分析して、慎重に捜査を進めるとみられる。


■日産、課…


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