国際原子力機関(IAEA)の原子力科学技術閣僚会議が28日、ウィーンで始まった。原子力技術による開発支援を重視する天野之弥(ゆきや)事務局長のもと、医療や農業への応用拡大を目指す初の閣僚級会議だ。原子力技術を持たない新興国からの要望は根強く、日本は今回、IAEAへの拠出から120万ユーロ(約1億5千万円)をこの分野に振り向けると表明した。
コスタリカとともに共同議長を務めた日本の辻清人外務政務官は「原子力科学技術の応用はSDGs(国連の持続可能な開発目標)の達成と密接に関係する」と述べ、がん治療や農業の生産性向上といった技術協力に貢献を続けるとした。
原子力の軍事転用を防ぐ「核の番人」として知られるIAEAだが、エネルギー以外の平和利用も主要な任務の一つ。天野氏は設立60周年の昨年、基本理念の標語を「平和のための原子力」から「平和と開発のための原子力」に改めた。SDGsとの関連を強調し、途上国への協力を重視する姿勢を強めている。(ウィーン=吉武祐)