日産自動車の会長だったカルロス・ゴーン容疑者(64)が巨額の役員報酬を過少記載したとして逮捕された事件で、「出身母体」ルノーがあるフランスでの高額報酬批判を懸念して日産の報酬を低く見せかけたのではないかとの見方が出ている。東京地検特捜部は動機面の解明も進めている。
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ゴーン前会長と側近の前代表取締役グレッグ・ケリー容疑者(62)は、金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の疑いで逮捕された。特捜部は、2010~17年度の8年間、前会長の年間報酬を約20億円と決めたうえで、各年の受け取りは約10億円にとどめ、残りの約10億円は退任後に受領する仕組みを作って隠したとみている。
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関係者によると、ゴーン前会長は「米国の自動車大手3社の最高経営責任者(CEO)の報酬を平均し、自分は20億円くらいもらっていいと思った」としたうえで、「社員のモチベーションが落ちるかもしれないので、合法的に一部は開示しないで済む方法を考えた」と供述。「これくらいは退任後に欲しいという期待で、今後の経済状況などに左右されるため、確定はしていない」という趣旨の説明もし、容疑を否認しているという。
一方、日産社内を含む複数の関係者は、こうした理由を疑問視し、「一番大きかったのはフランスの目ではないか」と指摘する。
フランス世論は所得格差に敏感で、経営者の高額報酬に対する視線も米英などに比べて厳しいといわれる。また日本で1億円以上の役員報酬の個別開示が義務化された時期は、08年のリーマン・ショックの後で、高額報酬への批判が世界的に高まっていた。
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