千葉県印西市の老人ホームで同僚らに睡眠導入剤を混ぜた飲み物を飲ませ、交通事故死させたなどとして、殺人や殺人未遂などの罪に問われた准看護師、波田野愛子被告(72)の裁判員裁判の判決が4日、千葉地裁であった。坂田威一郎裁判長は「周囲の信頼を裏切る悪質な犯行だ。動機は身勝手で酌量の余地はない」と述べ、懲役24年(求刑懲役30年)を言い渡した。
睡眠導入剤を飲ませる行為が殺害の実行行為に当たるかが争点になったが、判決は「死亡事故を引き起こす危険性の高い行為」と指摘し、「実行行為にあたる」と認定。殺意の有無についても、睡眠導入剤を飲ませて車を運転させれば交通事故を起こして死ぬかもしれないという「未必の殺意」があったと認めた。
判決によると、被告は昨年2月5日、同僚の山岡恵子さん(当時60)が車を運転して帰宅すると知りながら、睡眠導入剤を混ぜたコーヒーを飲ませ、寝ていた山岡さんをあえて起こし、帰宅するように仕向けて、交通事故を起こさせて殺害した。その後も、同様の手口で、同僚の女性職員(71)と夫(73)らに重軽傷を負わせるなどした。
公判では、殺意をめぐって、検察側が「危険な居眠り運転で死亡しても構わないと認識していた」と主張したのに対し、被告側が「殺意はない」と訴えた。さらに、被告側は「被害者が起きた時には薬の効果が切れていた」として、傷害罪の適用を求めていた。(寺沢知海)