厚生労働省は、他人の公的医療保険の保険証を使って受診する「なりすまし問題」の防止策として、医療機関を受診する患者に顔写真付き身分証明書の提示を求める方向で検討に入った。「なりすまし」は外国人労働者の受け入れ拡大に関連して議論になっているが、国籍を問わない「平等の原則」に沿って、日本人にも提示を求める。
厚労省は早ければ来年度からの実施を目指す。実施に先駆けて、医療機関などに対し、患者に顔写真付き証明書の提示を求めるように依頼する方針だ。
外国人については、出入国管理法(入管法)で日本に中長期滞在する人に携帯が義務付けられている写真付きの在留カードを、本人確認に用いることを想定。ただ、外国人に限った対応は、保険加入者は国籍を問わず、平等に医療サービスを受けられるという原則に抵触する恐れがある。
このため日本人にも提示を求めるが、日本人が誰でも運転免許証やパスポート、マイナンバーカードなどの顔写真付き身分証明書を持っているわけではない。保険証に顔写真を付けることも、「保険証更新の度に写真を準備する利用者の負担と、保険者の事務作業を考慮すると、実現のハードルは高い」(厚労省幹部)。
厚労省はこうした事情を踏まえ、日本人は身分証明書を持っていない場合でも保険利用を認める。一方、外国人が在留カードを携帯していない場合は入管法違反の疑いがある。保険利用を認めるか否かを含め、どう対応するのかという課題は未解決だ。(西村圭史)