来日した外国人が成田空港でタクシーに乗り、行き先を告げる。
「キンテツウラ」
合点した運転手は何も言わずアクセルを踏み込む。
目的地が、どこか分かるだろうか? 「キンテツウラ」は漢字にすると「近鉄裏」だ。昭和50年代、中央線沿いで新宿・歌舞伎町と並ぶ歓楽街と言われた東京都武蔵野市の吉祥寺駅東側の一角を指す。タクシーの話の真偽は不明だ。ただ、そんな話が地元に広がるほど、「怪しげな店が路地裏に並び、外国人もいた」と住民は話す。
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住みたい街で常に上位に入る吉祥寺。ファッション、文化、おいしい飲食店。平日でも若者、特に女性の姿を数多く見かける。
吉祥寺の街づくりの原型になるのが、1971(昭和46)年に完成した駅前の「吉祥寺大通り」だ。幅22メートルのメインストリートが南北に貫いた。そして74年5月、通り沿いに「近鉄百貨店」が開業した。一方で、大通りから店舗東側が死角になり、その年の秋ごろから、細い路地に「ピンクキャバレー」「のぞき部屋」「ビニ本屋」などの店が乱立していく。
駅前とは言え、木造2階建ての…