日産自動車前会長のカルロス・ゴーン容疑者による役員報酬の過少記載事件で、東京地検特捜部が10日、ゴーン前会長らとともに法人としての日産も起訴した。ゴーン前会長に権限が集中しガバナンス(企業統治)不全に陥ったことが事件の背景にあるが、ともに経営を担ってきた西川(さいかわ)広人社長兼CEO(最高経営責任者)の責任を追及する声も高まる可能性がある。
瀕死の日産に劇薬、圧倒的存在に ゴーン流に湧いた疑惑
緊急特集「ゴーンショック 日産会長逮捕」
日産は法人として金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の罪で起訴され、責任を追及される。金商法には違法行為を起こした人物とともに法人も罰する「両罰規定」があり、法人には7億円以下の罰金を科すとしている。ゴーン前会長による報酬の過少記載は長年続き、東京地検特捜部は法人の責任も重くみて規定を適用した。
日産は「証券市場における開示情報の信用性を大きく損なうもので、深くおわび申し上げます」とのコメントを出した。また、必要に応じて過去の有価証券報告書を訂正する予定と発表。役員報酬に関連する費用が発生する場合、2019年3月期決算で計上することも検討する。
事件はゴーン前会長と、側近でともに起訴された前代表取締役グレッグ・ケリー容疑者が主導したとされる。日産幹部は「役員報酬の配分はゴーン前会長に一任されていた」という。
ただ日産ではこれまで、ゴーン前会長、ケリー前代表取締役、西川氏の代表取締役3人が報酬を協議することになっていた。ゴーン前会長がワンマンだったとはいえ、日産も刑事責任を問われる中、「暴走」を止められなかった西川氏の責任を問う声が強まる可能性がある。経営に重大な悪影響を与えたとして、株主が株主代表訴訟を提起することもあり得る。
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