天野彬さん(電通メディアイノベーションラボ副主任研究員) 年賀状の減少は、日本社会におけるコミュニケーションの変化を象徴的に表しています。「新年のあいさつ」がSNSの普及に伴い、世代ごとに多様化しているからです。 あまの・あきら 1986年生まれ。2014年から現職。若者のSNS利用動向を分析している。著書に「シェアしたがる心理」。 LINEが浸透している10~20代は、年が改まった瞬間、「あけおめ」のメッセージを送りあうのが一般的です。僕も含めて20~30代は、旧年の感謝の気持ちと今年の抱負をフェイスブック(FB)に書き込むという人が多い。年賀状だと、人間関係の濃淡によって書き分ける必要があるけれど、FBならみんな一律の「友達」なので、同じ文面で済み、効率的です。 普段お世話になっている人への礼状、という意味合いも年賀状にはありますが、最近の若者の人間関係は、ネットの世界とリアルの世界をあまり区別していません。学校の友人よりネットでつながる人のほうが仲が良い場合すらあり、その点においても、年賀状の必要性は薄れています。 2003年に成立した個人情報保護法の影響も大きいです。学校が住所録をつくらなくなり、友だちの住所を知らないという子どもも多い。社員の自宅住所を共有しないという企業も増えました。日本郵政グループはネット業者と組み、相手の住所を知らなくても年賀状が送れるサービスを行っていますが、全体として減少傾向に歯止めをかけるのは難しそうです。 では明治以来の伝統をもつ年賀状はなくなるのでしょうか? 私はそう思いません。 SNSは手軽で早いのが魅力で… |
「つながり過ぎない」年賀状、遅さが重要 天野彬さん
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