東京電力福島第一原発事故で大阪市に避難し、市営住宅に無償で入居した40代女性が17日、がんで自宅療養中なのに退去を求められ、生活保護の打ち切りを示唆されて精神的苦痛を受けたとして、市に220万円の損害賠償を求める訴訟を大阪地裁に起こした。
訴状によると、女性は関東地方から自主避難し、2011年5月に災害救助法に基づき大阪市の市営住宅に無償で入居した。避難前からうつ病で働けず、生活保護を受けていた。
市は16年夏以降、同法の適用期限が17年3月末までとして、女性に転居を求めた。だが、女性が「がんとうつ病で転居できない」と拒むと、市の生活保護の担当窓口から17年12月に「転居しなければ生活保護を打ち切ることもある」と書面で通知されたという。
女性側は他の避難者は同じ部屋を有償に切り替えて住み続けているのに、取り扱いに差があり不合理だと主張。「生活保護打ち切りの通知は退去させるための過剰な行為で、不眠や体重減少の症状が出た」と慰謝料などを求めている。
市の生活保護担当者は取材に対し、通知を出した理由を「強制退去で住所がなくなると生活保護を受給できなくなるので、転居先を早く探すよう指導した」と説明。その後、女性の意向を聞き取り、支給を続けることにしたとしている。
一方、市は今年7月、女性に住宅の明け渡しを求める訴訟を起こしており、市営住宅を管理する市住宅部管理課は「女性の部屋は永続的には住めない種類の物件で、女性にも入居時に説明した」としている。(畑宗太郎)