来年4月に投開票されるインドネシア大統領選で、現職に挑む元陸軍特殊部隊司令官の野党党首プラボウォ候補(67)が、トランプ米大統領さながらの選挙運動を繰り広げている。メディアをウソつきと批判し、自国第一主義を掲げて「インドネシアを再び偉大に」と訴えている。
大統領選は直接選挙で、再選を目指すジョコ大統領(57)と、前回惜敗したプラボウォ氏との一騎打ち。
プラボウォ氏は5日、ジャカルタでの演説で拳を振り上げ、メディアを指して「公平でなく、ウソばかり」と怒りをぶちまけた。
矛先は、その3日前に開かれたイスラム強硬派組織の集会を巡る報道内容だ。首都中心部を大勢の市民らが埋め尽くしたが、参加人数を「約1100万人」と胸を張るプラボウォ氏に対し、地元メディアの多くは警察発表などを引用して「4万人」(CNNインドネシア)や「10万人」(トリビューンニュース)、「数十万人」(ジャカルタポスト紙)などと報じた。プラボウォ氏は、「メディアは客観的と自負するが、民主主義を都合良く操作している」と批判した。取り囲む記者らに「CNNは、たったの3万人と報じた」「誰もいなかったと言っておいて何が聞きたいんだ」と突っかかった。そして、(自らに好意的とされる)「tv Oneにだけ答えたい」と話した。
陣営は、ジョコ氏寄りとされる「メトロTV」の取材も「ボイコットする」と11月末に通知。公然とメディアを攻撃する姿勢に、地元のジャーナリスト連合は7日、首都で抗議をした。
「トランプ流」は、メディア批判にとどまらない。
陣営が9月の選挙戦開始から掲げるスローガンの一つが、「Make Indonesia Great Again」(インドネシアを再び偉大にする)だ。プラボウォ氏は演説で「我が国のリーダーは、なぜ、トランプ氏のように勇気をもって言わないのか。インドネシア・ファーストだ」と力を込める。
トランプ流は世界各地で一定支持を集めており、民間調査機関「LSI」による11月の世論調査でジョコ氏に20ポイント以上の差をつけられているプラボウォ氏にとって再挑戦の糸口のようだ。
同国の政治に詳しい本名純・立…