法務省が21日、今年の「犯罪白書」を公表した。高齢者の犯罪の大半を占める窃盗に焦点を当てて分析した結果、短期間のうちに犯行を繰り返す例が多いとして、「従来の刑事手続きによる再犯の抑止が必ずしも十分に機能していない」と警鐘を鳴らしている。
白書によると、昨年1年間で新たに刑事施設に入った受刑者は1万9336人(前年比5・5%減)で、11年連続で減少し、戦後最少を更新した。ただ、65歳以上の高齢受刑者は2278人で、10年前の約3・3倍に増えた。高齢者の割合は全体の11・8%で、10年前に比べて8・8ポイント上昇。女性に限れば19・7%に達し、10年前より16ポイント増えた。罪種別では窃盗が大半を占めた。
こうした状況を踏まえ、法務省は2011年6月に全国の裁判所で窃盗で有罪が確定した高齢者354人、65歳未満の非高齢者2067人を対象に特徴を分析した。その結果、高齢者の85・0%は手口が万引きで、非高齢者の52・4%を大きく上回った。高齢者の万引き犯のうち、約7割は食料品を盗んでおり、被害額は千円未満が約4割、3千円未満が約7割だった。また、約7割は「普段から買い物する店」で万引きをしており、男性の半数超、女性の約8割は動機を「節約」と答えた。
高齢男性の約8割、高齢女性の約6割は罰金以上の前科があった。罰金処分者の場合、約2年間で高齢男性の約19%、高齢女性の約34%が再犯に至っており、処分を受けても犯行を繰り返す傾向も浮かんだ。白書は「適切な指導や支援を受ける機会を逸している人が少なくない」と指摘し、「保護観察や矯正処遇を受ける機会のない高齢犯罪者に対する対応の仕組みの検討が必要だ」としている。(浦野直樹)