米国発の株価急落が再び世界を襲った。米中貿易摩擦による景気減速の懸念に加え、トランプ米大統領の政権運営が不安定さを増し、投資家の動揺に拍車をかけている。
日経平均2万円割れ、下げ幅一時1千円超 世界株安に
12月初めの米中首脳会談で米中摩擦は「一時休戦」したかにみえたが、中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の幹部逮捕で再び懸念が強まった。中国の景気減速を示す指標も出て世界経済の先行き不安が拡大。米連邦準備制度理事会(FRB)は19日に年内4回目の利上げを決めたが、来年の利上げペースは市場の期待ほどは緩めず、株安を招いていた。
そうして市場が神経質になっているところにトランプ政権の混乱が追い打ちをかけた。メキシコ国境の壁建設予算を巡り野党民主党と対立し、連邦政府は一部閉鎖。シリア問題を巡る対立でマティス国防長官が退任に追い込まれ、トランプ氏の政権運営能力への疑問が深まった。
トランプ氏は株価急落の責任をFRBだけになすりつけ、パウエル議長の解任検討まで報じられた。政権がさらに市場の不安をあおる形になっている。
米国の景気拡大は10年近くに達し、徐々に減速するとの見方はもともとあった。FRBは緩やかな利上げで過熱を防ぐ「軟着陸」を試みてきたが、株安にいら立つトランプ氏はそれを止めようと不安定な言動を繰り返し、株価急落を呼んでいる。世界を引っ張る米国経済の先行きには一気に暗雲が立ちこめてきた。(ニューヨーク=江渕崇)