日産自動車の前会長カルロス・ゴーン容疑者(64)が私的な損失を日産に付け替えたという特別背任の疑いで、3回目の逮捕をされてから28日で1週間。前会長は「日産に損害を与えていない」と否認している。役員報酬の虚偽記載事件と同じく、東京地検特捜部と真っ向から対立したまま、捜査は越年する。
カルロス・ゴーン もたらした光と影
会社法違反(特別背任)の逮捕容疑は二つだ。
①2008年10月、約18億5千万円の評価損が生じた私的な投資契約を日産に付け替えた②契約を戻す際、協力したサウジアラビアの実業家に09年6月~12年3月、1470万ドル(現在のレートで約16億円)を送金した、というものだ。
関係者によると、前会長は日本円でもらっていた役員報酬をドルに替えるため、06年以降、自身の資産管理会社と新生銀行との間で、金融派生商品であるスワップ取引を契約した。
この取引は、3カ月ごとに事前に決めた金額でドルを買い、実際の為替相場との差で損益が出る仕組み。例えば1ドル=100円で買うことに決めると、実際の相場が1ドル=120円であれば20円安くドルを手にできる。逆に円高で1ドル=80円なら20円高くドルを買わざるをえず、損失が出る。
事件のきっかけは、08年秋の…