(視界良考)滝口悠生さんと@寅さんの「新世界」
「生産性」という言葉が飛び交う現代社会。だが、四角い顔のあの男は「結構、結構」と笑い飛ばすだろう。映画「男はつらいよ」の主人公、車寅次郎ことフーテンの寅さんである。スクリーンに登場して50年を迎える来年、22年ぶり50作目となる新作が公開される。彼は新しい時代に何を伝えるのか。寅さんの世界を色濃く残す、大阪の下町を舞台に考えた。
串カツのソースやおでんのにおいが路地裏に漂う。大阪のシンボル、通天閣がそびえる新世界(大阪市浪速区)。松坂慶子がマドンナを演じ、芦屋雁之助、大村崑、六代目笑福亭松鶴(しょかく)、正司照枝・花江と大阪ゆかりの役者や芸人が脇を固めた秀作「浪花の恋の寅次郎」(第27作、1981年)の舞台にもなった。
平日の午後、横丁を訪ねると勤…